イニエスタが神戸を去ったのは、まだ試合に出てサッカーを続けたかったからだ。バルセロナやスペイン代表で活躍し、2018年にヴィッセル神戸へ加入した世界的スター。しかし2023年には、本人が望む出場機会と、チームでの起用に隔たりが生まれていた。
神戸で引退するつもりだった。それでも選んだのは、別のチームで現役を続ける道だった。なぜその決断に至ったのか。本人の会見と、当時のファンの声を振り返る。
まだ試合に出たかった――神戸で引退するはずだったイニエスタの決断
2023年5月25日の退団会見で、イニエスタは神戸で現役を終える将来を思い描いていたと明かした。一方で、プレーへの意欲は残っており、練習を重ね、試合で貢献する準備をしていたという。
ただ、監督の優先順位は自分とは違うところにあると感じるようになった。その現実を尊重して受け入れたうえで、プレーを続けたい気持ちと照らし合わせ、クラブとの話し合いで退団を決めた。これが会見で本人が説明した経緯だ。
神戸への感謝も繰り返し語っている。居心地のよい場所に残ることと、選手として試合に出ること。その両方をかなえるのが難しくなった別れだったのだろう。会見を読むと、単に神戸が嫌になって出ていった、という話では片づけられない。
退団を発表したのは5月25日。神戸での最後の試合は、7月1日の北海道コンサドーレ札幌戦だった。この時点で決めたのは神戸を離れることであり、現役引退ではない。
会見の発言と写真は、ヴィッセル神戸公式の退団会見レポートで読める。日程はクラブの退団発表にも記載されている。
シーズン途中の別れに驚き、それでも惜しまれたプレー
正式発表より前、5月6日のドメサカブログは神戸新聞の退団報道と、サッカー掲示板の反応を紹介していた。シーズンの途中で主将が去ることを残念がる投稿もあれば、出番が少ないなら移籍を望むのも理解できる、という投稿もあった。
まだ活躍できるのではないかという期待、日本に来てくれたことへの感謝、スター選手を迎えた時代を惜しむ声も並ぶ。一斉に怒っていたわけでも、全員が納得していたわけでもない。
もっと神戸で見たかった。でも、ベンチにいる姿を見たいわけでもない。記事を読んでいて、惜しむ気持ちと送り出したい気持ちのどちらにも、うなずいてしまう。
これらは退団報道を受けた当時の投稿者の感想だ。本人の退団理由は、その後の会見で語られた説明と分けて受け止めたい。
当時の掲載記事:ヴィッセル神戸MFイニエスタが今夏退団か 地元紙の神戸新聞も報道(ドメサカブログ)
神戸退団後はUAEで現役続行、引退は2024年10月
神戸を去ったイニエスタは、2023年8月にアラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ・クラブへ加入した。会見で語った希望のとおり、新天地で選手生活を続けたのだ。FIFAの紹介記事でも、神戸から移った後の姿が紹介されている。
現役引退を正式に発表したのは、翌2024年10月8日。40歳でプロ選手としてのキャリアに区切りをつけた。古巣FCバルセロナの公式記事が、その発表を伝えている。
振り返れば、神戸との別れは選手生活の終わりではなく、もう一度プレーする場所を求めた決断だった。神戸で引退したい気持ちがあっても、まだ試合に出たい。その思いまで消えたわけではなかった。